新しい点数計算方法を考える③
前回の記事
ドラの翻数
前回、(10)式による「2乗シフト」の点数計算方法にはまだ不満がある、と言いました。
その不満とは、ズバリ、「ドラに1翻を与えるのは高すぎる」ことです。
なぜかというと、現在の麻雀は「リーチドラゲー」であり、リーチやドラを狙っていくことが戦略として好まれすぎていると思うからです。もっと手役が重視され、バランスのよいルールにすべきだと考えます。
その方法として、カンを廃止し、カンドラとカン裏ドラをなくすことがあります。そこで綾目麻雀ではいずれのルールでもカンが廃止されています。
さらにドラや赤ドラを廃止する手段もあります。競技性を重視した競技ルールではドラ・赤ドラが廃止されています。一方、ドラ・赤ドラが麻雀の人気を支えている一面もあることから、競技性と偶然性の両方を重視する調合ルールでは採用されていす。
また、手役の喰い下がりは廃止され、手役がより有利になっています。
その上で、調合ルールでの手役とのバランスを考慮すると、それでもドラに1翻を与えるのは高すぎるという結論に至りました。
ではどうすればよいでしょうか。
ドラ0.5翻という選択
この解決策は、ドラを1翻ではなく、0.5翻にすることです。
これまで翻数\(x\)は自然数(0翻を認めれば0以上の整数)と考えてきましたが、これを0.5翻単位で考えていけない理由はありません。
0.5翻単位にすれば計算が難しくなると思われるかもしれません。確かに、0.5翻単位にすると2乗シフトの計算では点数に小数第2位まで0以外の数字が出現する場合ができてしまいます。
別の解決策として、ドラを1翻のままにし、反対に手役を現在の二倍の翻数に上げることが挙げられます。しかし、この方法は自然数2桁×2桁の計算が増えてしまい、結果は3桁以上の場合が多くなるのが欠点です。
切り捨て・切り上げの計算
0.5翻単位の計算をもっと簡単する方法があります。それは切り捨て・切り上げの計算です。 切り上げは通常の点数計算でさんざんやってきたことで、別に新しい計算ではありません。切り捨ても切り上げがわかればなんということはありません。
ただ、この”計算をより簡単にする”切り捨て・切り上げの計算方法は、現在の麻雀では副作用としてちょっと分かりにくい、変な結果をもたらしてきたのも事実です。
例えば子ロン2翻30符2000点と子ロン3翻30符3900点のところです。倍々計算が基本のはずなのに3翻の点数は2翻の倍になっていないのは、計算の途中で切り上げを行っているからです。
子ロン2翻の場合、符に翻数の寄与分である\(2^{ 2 + 2 } = 16\)と他の親子が払う合計分\(4\)を掛けますから、30符切り上げ前の点数は\(30 \times 16 \times 4 = 1920\)点です。子ロン3翻の場合、符に翻数の寄与分である\(2^{ 2 + 3 } = 32\)とロン支払い分\(4\)を掛けますから、30符切り上げ前の点数は\(30 \times 32 \times 4 = 3840\)点です。 この時点では3翻の点数は2翻のちょうど2倍です。しかし、”計算をより簡単にする”ために十の位を切り上げると2翻の点数は2000点、3翻の点数は3900点となり、2倍にならなくなるのです。
これのようなことは点数表にいくつも見られます。点数表だけ見ると一見不規則な点数は初心者を混乱させ、また点数を覚えるのを難しくするでしょう。
0.5翻単位の計算で切り捨て・切り上げを行うのも同じような混乱をもたらすと危惧するかもしれませんが、綾目麻雀の点数計算式はそれについての心配はいりません。
翻数+1の小数第1位の切り捨て・切り上げ計算
それでは、0.5翻単位の点数計算式に切り捨て・切り上げ計算を適用してみましょう。
ひとまず(10)式全体に切り捨て計算をするのが単純です。全体を切り上げてしまうと、翻数の小数第1位が0から5に0.5上がったときの点数の変化量が、翻数の整数部が同じで小数第1位が5のときから繰り上がって0に上がったときの点数の変化量よりも大きくなってしまう可能性がありますから、切り捨てをするのが妥当です。
比例定数は後で考察するため1とすると、計算式は(14)式になります。
$$p = \lfloor ( x + 1 )^2 \rfloor \tag{14}$$
\( \lfloor x \rfloor \)は床関数で、小数第1位で切り捨てる計算をします。反対に\( \lceil x \rceil\) は天井関数で、小数第1位で切り上げる計算をします。
察しが良い方は「結局、小数第2位まで計算する必要があるじゃないか」とすぐに気づくでしょう。
では、全体ではなく、次式のように内側のかっこに切り捨て・切り上げ計算を適用してみます。
$$p = \lfloor x + 1 \rfloor \lceil x + 1 \rceil \tag{15}$$
これで小数同士の掛け算は不要になりました。そして、(14)式と(15)式は、\(x\)が0から始まる0.5刻みの数において等しいことが分かっています。
例として2.5翻のとき、\( x + 1 = 3.5\)ですから、3.5を切り捨てて3、切り上げて4となり\(p = 3 \times 4 = 12\)という結果が得られます。これは3.5の2乗である12.25の小数点以下を切り捨てた数と同じです。
これを0翻から13翻まで計算した点数表を、途中式及び変化量(後方差分)とともに以下に示します。
| 翻数 \(x\) | $$\lfloor x + 1 \rfloor \times \lceil x + 1 \rceil$$ | 点数 \(p\) | 変化量(後方差分) |
| 0 | 1×1 | 1 | – |
| 0.5 | 1×2 | 2 | 1 |
| 1 | 2×2 | 4 | 2 |
| 1.5 | 2×3 | 6 | 2 |
| 2 | 3×3 | 9 | 3 |
| 2.5 | 3×4 | 12 | 3 |
| 3 | 4×4 | 16 | 4 |
| 3.5 | 4×5 | 20 | 4 |
| 4 | 5×5 | 25 | 5 |
| 4.5 | 5×6 | 30 | 5 |
| 5 | 6×6 | 36 | 6 |
| 5.5 | 6×7 | 42 | 6 |
| 6 | 7×7 | 49 | 7 |
| 6.5 | 7×8 | 56 | 7 |
| 7 | 8×8 | 64 | 8 |
| 7.5 | 8×9 | 72 | 8 |
| 8 | 9×9 | 81 | 9 |
| 8.5 | 9×10 | 90 | 9 |
| 9 | 10×10 | 100 | 10 |
| 9.5 | 10×11 | 110 | 10 |
| 10 | 11×11 | 121 | 11 |
| 10.5 | 11×12 | 132 | 11 |
| 11 | 12×12 | 144 | 12 |
| 11.5 | 12×13 | 156 | 12 |
| 12 | 13×13 | 169 | 13 |
| 12.5 | 13×14 | 182 | 13 |
| 13 | 14×14 | 196 | 14 |
途中式を見れば分かるように、計算は掛け算九九+αの範囲内に収まっています。計算結果は9翻未満では2桁の数字です。点数の変化量は混乱をもたらすものではなく、むしろ切り捨て・切り上げ計算により「規則正しく」なっています。
もう点数を覚える必要はありません。計算が暗算できるほど簡単だからです。
そして、点数表を見ていると、なんだか「よさげな感じ」の数字が出てきていると思いませんか? それは点数の75%は偶数になるからです。小数第1位が5の翻数では点数が必ず偶数になるのです。
0.5翻役
ここまでで分かりやすい0.5翻の計算が可能であることが示されました。
ところで、0.5翻計算はドラだけでなく役も0.5翻単位で定めることを可能にします。特に、綾目麻雀では廃止されている符が付く形を0.5翻の役として採用すれば、符計算廃止に反対する人たちの抵抗を和らげ、綾目麻雀の普及を促進するでしょう。
また、必須にして複雑な1翻役平和を0.5翻役「四順子」として新しく定義し直し、ルールをより「きれいに」することができます。
0.5翻にどのような役を定めるかは別のページで説明します。
計算式に必要な残りの要素
今までの議論からより良い点数計算式(15)式が導かれました。これを現在の麻雀の点数に近似された「補正」の点数とグラフで比較してみます。

どうでしょう? (15)式は「補正」よりもずっときれいな線を描いているように見えるのではないでしょうか(自画自賛)。
さて、計算式の完成までもう少しです。必要な残りの要素をすべて挙げていきます。
- 点数の上限はいくつか
- 点数が上限となる最小の翻数はいくつか
- ロンとツモの点数はどうするか
- 親子の点数差をどうするか
- プレイヤー数が異なるときはどうするか
- 何点単位で点数を計算するか
次回はより普及するルールを考えることが重要になってきます。




ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません